エネルギー,化学物質,水管理政策における市民参加型の意思決定手法に関する国際比較
研究の目的・意義
エネルギー問題に典型的に見られるように,科学技術は社会に便益を与えると同時にさまざまな摩擦を引き起こしており,科学技術に関わる政策について,その意思決定手法の開発が喫緊の課題となっている。従来,討論型世論調査,コンセンサス会議等の先駆的取組みが存在するものの,未だ試行段階または一部の地域・分野に限定されたものにとどまっており,国際的な共通理解が存在しているとは言いがたい。本研究は,科学技術に関わる政策のなかでも環境政策を対象として,欧米先進国のみならず,南米およびアジアの大学とも連携して社会的意思決定の基本的な考え方を提示することにより,科学技術民主主義の促進と持続可能な社会の形成への寄与をめざすものである。
プロジェクトTIGER メンバー紹介
【研究代表者】大久保 規子 法学研究科/教授 研究代表者
環境分野の市民参加と環境公益訴訟
環境分野のグリーンアクセス(情報アクセス,政策形成/決定参加,司法アクセス)の実効的保障のあり方について研究しています(http://greenaccess.law.osaka-u.ac.jp/)。本研究では,高度な科学技術に係る環境政策の合意形成のあり方について,許認可段階との違いを意識しつつ検討したいと考えています。
【研究分担者】(50音順)
◆上須 道徳 環境イノベーションデザインセンター(CEIDS)/特任准教授
経済学手法を用いたサステイナビリティ評価、サステイナビリティ学教育
合意形成についての研究成果に経済学の観点から貢献することはもちろんですが、本プロジェクトを通じて共通の問題認識を醸成することで、(理系の方が思っているよりも)高くて分厚い社会科学間の壁を低くできればと思っています。
◆小林 傳司 コミュニケーションデザイン・センター/教授
◆中山 竜一 法学研究科/教授
「リスクと法」にかんする法哲学的研究
予見不可能な類のリスクに直面する際、法にはいったい何ができるのか──大きな問題ですが、少しずつでも考えを深めていければと思います。
◆原 圭史郎 環境イノベーションデザインセンター(CEIDS)/特任准教授
都市環境工学、サステイナビリティ・サイエンス
サステイナビリティ(持続可能性)の観点から、社会を支える技術・システムの多元的評価の方法論を構築するとともに、特に水管理政策における市民参加型意思決定手法の国際的な比較を進めていきたいと思います。http://www.dma.jim.osaka-u.ac.jp/view?l=ja&u=2368
◆平川 秀幸 コミュニケーションデザイン・センター/教授
◆福井 康太 法学研究科/教授
公共的紛争解決を通じた制度形成
環境問題などに関わる公共的紛争の解決は、それ自体制度形成という側面がある。本プロジェクトではそのような制度形成への当事者の参加保障や意見表明の機会保障について研究していきたい。
◆松本 和彦 高等司法研究科/教授
環境リスク規制の法構造と正当化可能性
エネルギーや科学技術の法的規律を素材に、公的決定の規範的正当化の可能性を探ってみたいと考えています。
◆松本 充郎 国際公共政策研究科/准教授
水法・原子力法における訴訟と政策形成・合意形成の関係
水法・原子力法の研究を通じて、行政訴訟と民事訴訟の適切な役割分担、行政訴訟と民事訴訟を有効に機能させるための行政組織・行政手続・訴訟手続のあり方、既存の行政訴訟・民事訴訟と公益訴訟の異同、訴訟が政策形成・合意形成に与える影響について考えたいと思います。
◆三成 賢次 法学研究科・教授/コミュニケーションデザイン・センター長
現代市民社会に関する比較法文化史的研究
新たなかたちでの「市民的公共」の再生が地域においても、またグローバルレベルでも求められているけれども、 「公」から一方的に求められる公私協働のもとではなく、公共的な諸政策に関し、市民社会の中から、また新たな協働のあり方から新たな「市民的公共」が創り出されていく可能性や道筋を、比較法文化史的な観点から探ってみたいと考えています。
【研究協力者】
<<特任研究員>>
◆チアゴ・トレンチネラ(Tiago Trentinella) 法学研究科/博士後期課程
◆山田 綾子 法学研究科/研究推進担当
<<大学院生>>
◆シリジャン・ウィリヤーポン(Sirichan Viriyaporn) 法学研究科/博士前期課程
公害裁判外紛争解決手続(ADR)に関するタイと日本の比較研究
裁判外紛争解決手続(ADR)は一つの司法アクセスの解決方法です。現在は日本で発展した環境紛争解決能力を身につけることができるように環境裁判外紛争解決(ADR)に関する研究をしています。特にこのプロジェクトはタイと日本の水管理政策における裁判紛争外手続手法の国際的な比較を進めていきたいと思います。様々な人々と交流会を楽しみにしています。
◆ガオ・ユエ(高月) 国際公共政策研究科
◆ソウ・テン(曾天) 法学研究科/博士前期課程
◆鳥谷部 壌 法学研究科/博士後期課程
国際水路衡平利用原則の法的性格
国際水路法の分野の中心概念、「衡平かつ合理的な利用原則」および「国家の協力義務」について研究を行っています。本プロジェクトでは、特に国際的な水管理政策として、欧州と北米の国際流域委員会の取組みの比較検討から、市民参加型意思決定手法の法的意義について考えてみたいと思っています。
◆リ・シュウハイ(李舟佩) 法学研究科/博士前期課程